お釈迦さまが王舎城の近く、竹林精舎というところにいたときのこと。そこに、バラモン教の僧侶の男がやってきました。どうやら、その男の家族が、バラモン教を捨てて、仏教の僧侶になったことに腹をたてているようです。
その男がお釈迦さまの前に進み、顔をまっ赤にして怒り、ひどい言葉をたくさんいいました。
しばらく、お釈迦さまはその怒りの言葉を聞いていました。やがてその男が少し静まったとき、
「あなたの家に、お客さまがくることがありますか?」
と、お釈迦さまはおかしな質問をしました。
するとその男はふしぎそうな顔をして、
「もちろんだ!」と答えました。
さらにお釈迦さまは質問します。
「そのとき、客に食事を出すことはありますか?」
「もちろんだ!」
「では、客が何も食べずに帰ったとしたら、その食べ物はどうするのですか?」
「食べてもらえなければしかたがない。それは私が後で食べるだろう」
「今あなたは、私の前にいろいろな悪い言葉をならべました。しかし、私はそれを頂きません。だから、それはもう一度あなたのものになります。」
さらにお釈迦さまは、
「もし私があなたにののしられ、ののしり返したとしたら、それはあなたと一緒に食事をすることと同じです。わたしはあなたからのご馳走はいただかないよ」
そんな事をいわれた男はさらにふしぎそうな顔をしていいました。
「あなたは怒るということがないのですか?」
その質問に対してお釈迦さまは、
「怒っている人に、怒り返すのは悪いことです。反対に怒っている人に、怒り返さないものは二つの勝利が与えられます。他人が怒っているのを知って、正しく自らをしずめる者は、自分に勝ち、また他人にも勝るのです」
この対話の後、この男はお釈迦さまの魅力と教えに導かれ、弟子となり、尊い聖者になりました。
おしまい
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